2022-03-03 ワイン世界最高齢達成 五月山動物園スタッフから皆様へのご挨拶
ワイン世界最高齢達成
五月山動物園スタッフから皆様へのご挨拶

五月山動物園のアイドル、ウォンバットの「ワイン」が、この度、世界最高齢ウォンバットとして2つの世界記録に認定されました。
「ワイン」の今までの生涯には様々な物語がありました。
1989年、「ワイン」はオーストラリア・タスマニア州で、交通事故で死亡した母親の袋の中から助け出され、保護施設に入り人工哺育で育てられました。
ウォンバットの平均寿命は、飼育下で20年、野生で5年ほどと言われています。オーストラリアでは天敵に襲われたり、交通事故にあったり、時には害獣として駆除されたり、とても過酷な環境で生きています。
このように、交通事故で命を落とした母親の袋の中から、生きて無事に保護されたことは奇跡と言えます。
保護施設で育てられたウォンバットは、その後、野生に返したり、動物園に引き取られたりします。動物園に引き取られるウォンバットの中には、オーストラリア国外の動物園に輸出されるものもいます。
「ワイン」は、1990年同じく施設に保護されていた「ワンダー」「ティア」と共に、動物親善大使として、タスマニア州ローンセストン市の姉妹都市である、池田市の五月山動物園にやってくることになりました。
五月山動物園では、ウォンバットの受入れのために、獣舎の建設や近隣の大きな動物園に飼育研修に行くなど、準備を整えていました。
3頭のお披露目の日には、オーストラリアからやってきた珍獣ウォンバットを一目見ようと多くの人が来園しました。
飼育員たちは、飼育経験のない動物に戸惑いながらも獣医師などと連携して、少しでもウォンバットたちが暮らしやすい環境を作っていきました。その中でも「ワイン」は、人懐っこい性格で、手を焼くことのないウォンバットでした。
1992年、ウォンバットフィーバーに沸く五月山動物園に、また嬉しい出来事が起こりました。なんと「ワイン」と「ワンダー」が、日本国内初の繁殖に成功したのです。
誕生したメスのウォンバットは「サツキ」と名付けられ日本中で話題となりました。
翌年にも同じくメスの「サクラ」が誕生し、五月山動物園は「ウォンバットのいる動物園」として一躍有名になりました。
繁殖に期待を寄せ、日本中の動物園から繁殖のための交換などの依頼が舞い込みました。
しかし、ウォンバットの生態は謎が多く繁殖についても解明されていることが少ないため、その後、繁殖に成功することはありませんでした。
2007年に「フク」「アヤハ」のペアーが新たに仲間入りし、日本国内3例目の繁殖を目指しましたが、「アヤハ」が急性の内臓疾患で死亡してしまいました。
その後、「ティア」「サツキ」「サクラ」も老衰などで亡くなり、五月山のウォンバットは「ワイン」「ワンダー」「フク」の3頭になりました。
ウォンバットは一度体調を崩すと短い期間で悪化することが多いので、毎日のフンのチェック、触診、残餌の計量や、それぞれに合せた餌の調理など、きめ細やかにケアーしています。高齢になった「ワイン」「ワンダー」には、特に注意して飼育しました。
2015年、五月山動物園では、「フクのお嫁さんを迎える」という、新たなウォンバットの誘致活動を開始し、当時メディアなどに大きく取り上げられ話題となりました。多くの人の協力で、2017年に「フク」のお嫁さん「マル」と、「コウ」「ユキ」がやってきました。
「ワイン」も、新たな3頭の仲間入りで少し若返ったように感じました。
そんな矢先「ワイン」のパートナーである「ワンダー」が、3頭の来園を見届け安心したかのように静かに息を引きとりました。亡くなった日の朝、獣舎の中では心配そうに「ワンダー」に寄り添う「ワイン」の姿がありました。
その後、「フク」との繁殖を目指していた「マル」も急死し、「ワイン」の両隣の獣舎が空き「ワイン」が少し寂しいようにも見えましたが、「ユキ」を、亡くなった「ワンダー」の獣舎に引っ越しさせたことで、また元気な姿に戻ったように思いました。
しかし、「ワイン」も歳を取るにつれて、食べる時間や1回の食事で食べる量も少なくなっていくことから、飼育員たちは、出来るだけ負担なく食べさせるために、今日も調理法を工夫しています。
目も少しずつ悪くなり、音や匂いに頼る部分がさらに増えていることから、日常的に声をかけ触れて「安心できる環境だよ」と伝わるように意識して係わっていくなど、「ワイン」の健康状態を常に把握しケアーしています。
2022年、このような五月山動物園の歴史、環境の中「ワイン」はウォンバット世界最高齢という、すばらしい記録を達成することができました。
「ワイン」の誘致に尽力された皆様、来園時から携わってきた飼育員をはじめ、動物園関係者、そして、全てのウォンバットファンの皆様、みんなで達成した大記録です。
これからも「ワイン」が健康で長生きできるように、動物たちの暮らしやすい環境を守っていけるように、そして、動物たちとのふれあいの中で、動物の息遣いや命の大切さを感じることのできる「学びの場」として提供できるように、五月山動物園スタッフ一同精一杯頑張ります。
最後に「ワイン」を生み、守ってくれた「ワイン」のお母さんありがとうございます。
「ワイン」はまだまだ元気です。
「ワイン」の物語はまだ続きます。

一般財団法人池田みどりスポーツ財団
五月山動物園スタッフ一同